国内ネットブック/UMPC開発者インタビュー【オンキヨー編】
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神谷速夫氏 |
オンキヨーの「SOTEC DC101」は、まだ数少ない国内メーカーのネットブックというだけでなく、同社がソーテックを吸収してから出される初のノートブックでもある。そして、同製品の開発には元ソーテックのスタッフだけでなく、オンキヨーのスタッフも関わっていたのだという。今後の同社のPC事業の話も踏まえつつ、ネットブック開発にまつわる話を、同社PC商品開発担当部長の神谷速夫氏と、技術部PC技術グループグループマネージャーの八窪春男氏に伺ってきた。
なお、オンキヨーは9月1日付けでソーテックを吸収し、「ソーテック」はオンキヨーのPCブランドとなった。本製品の開発時期は、ソーテックが1法人だった時代にさかのぼるが、簡略化するため、ここでは社名をオンキヨーとして話を進める。
●デザインは非PC担当のデザイナーが
Q DC101の開発に取り組み始めた時期はいつ頃でしょう。また、なぜネットブックに参入しようと考えたのでしょう。
神谷氏 2007年の時点で、我々のノートブックのラインナップには15.4型しかありませんでした。これを広げていく上で、新しいジャンルに挑戦しなければなりませんでした。そんなとき、インテルさんからネットブックのプラットフォームを紹介して頂いたのと、モバイルは今後、普及が見込め、ネットブックなら既存の15.4型の市場を侵食せずに、今の売り上げに上乗せできると判断しました。そして、2007年の秋頃から企画を始めました。また当時、オンキヨーがソーテック吸収することは決まっており、デスクトップとノートブックで新しいものを1機種ずつだそうということもありました。
Q 開発で苦労した点、重視した点などを教えてください。
八窪春男氏 |
八窪氏 デザインですね。この製品はノートブックではオンキヨーと元ソーテックの初のコラボレーションによるものですが、デザイナーはオンキヨー出身でPCに関わったことのない担当者をあてました。天板の成形にはインモールド方式を採用しています。白が基調となっていますが、先の方がシルバーになっています。その仕上げに苦労しました。
Q ネットブックではスケールメリットを出して、安くすることが重要で、日本のメーカーが得意な点を出しづらい状況です。
神谷氏 ネットブックのコンセプトはミニマムPCだと考えます。機能面で無駄を省き、基本的なものだけを入れるが、妥協はしないというものです。その点は15.4型とは大きく異なります。そして、日本メーカーが日本市場で出す以上は、日本人らしい物作りをしないといけないと考えました。そこで、我々は質感と品質という点で差別化を図りました。
Q 台湾製品や他社製品にない特徴などありますか。
八窪氏 液晶の額縁が黒くなっていますが、これは液晶を見やすくするための工夫です。ソフトウェアの面ではこの製品独自の特徴というのはないのですが、筆まめなど、ほかのノートブックと同じ添付ソフトをつけています。
Q 10.2型を選んだ理由を教えてください。
八窪氏 キーボードのサイズを確保するためです。この製品を使うのは、主にビジネスマン、あるいは2台目として使う人たちで、これが初めてのPCという人はいないと思っています。その意味で、キーボードの打ちやすさは重要で、我々は17.5mmというネットブックでもっとも大きいキーピッチを確保しました。
SOTEC DC101。キーピッチは17.5mmを確保 | ツートンカラーが印象的な天板部 |
Q 製造はどこで行なっているのでしょう。
八窪氏 中国です。コストを考えてのことで、部材も現地で調達しています。中国の製造委託はすでに多数の日本メーカーも利用しており、そのレベルは上がっています。日本メーカーの製品だけど、安く、かつ品質が高いものを提供しようと目指しました。ただ、為替レートが元高となって、人件費が上がってしまったのは予想外でした。
Q 価格を59,800円にした理由はどのようなものでしょう。
神谷氏 企画段階では49,800円というアイディアもあったのですが、最終的にはこの値段になりました。59,800円という値段は心理的に購入しやすい値段だと思っています。
Q Atomベースのネットブックでは唯一Gigabit Ethernetを積んでいるのはなぜでしょう。
八窪氏 他社との差別化のためです。
Q 開けるとメモリやHDDを交換できるよう、底面にフタをつけていますね。
八窪氏 ユーザーのメンテナンス性を高めるためです。
Q 仕様表でメモリの最大搭載容量が2GBと明記されているのは、ユーザーがアップグレードしてもいいということでしょうか。
八窪氏 自己責任となりますが、その通りです。
Q SSDを採用する考えはなかったのでしょうか。
神谷氏 セカンドPCとして利用する人にとっては、ある程度の容量が必要になってきます。しかし、大容量のSSDは高価なので採用しませんでした。ちなみに、当初は80GBのHDDを予定していましたが、値差がなくなってきたので120GBを採用しました。
Q この製品には、mini USBとモデムのポートがありますが、実際には使えなくなっています。
八窪氏 モデムについては、この筐体を他の国にも出荷する都合上、つけてあります。mini USBは実現したかったのですが、日程的に実装が困難だったため、つけられませんでした。今後のモデルでは使えるようになる可能性はあります。
Q バッテリの駆動時間が他社製品より短いです。
神谷氏 見た目と大きさ、重量のバランスから3セルにしました。短いのは事実ですが、本製品の用途から考えると致命的に短いとは言えないと思います。
八窪氏 短くて困るという人にはオプションで6セルバッテリを出す予定です。また、その準備ができたら、BTOメニューにも加える予定です。
Q 無線WANモデルの予定はないのでしょうか。
八窪氏 検討はしました。ちなみに、無線LANはmini PCIのカードなので、それと置き換えることは可能です。
神谷氏 将来的にWiMAXを採用することは検討しています。
Q オーディオ周りにオンキヨーの製品や技術は盛り込まれてないのでしょうか。
神谷氏 今回の製品にはそういったことはありませんが、やりたいと考えています。ただ、その場合は、アンプから何から手を入れないといけません。今はコストが低いデジタルアンプがないので、やるとすると15.4型の方から取り入れることになるでしょう。
●オーディオ環境の変遷にあわせ、会社も変えていく
Q 話はPCビジネス全体に変わりますが、オンキヨーがPCビジネスに注力するのはどういった理由があるのでしょうか。
神谷氏 きっかけはiPodです。iPodが出たことで、PCとiPodだけで完結するようになり、ミニコンポなどの従来のオーディオ製品が売れなくなりました。その時に、ではPCの周辺機器メーカーになろうかという議論が出ました。しかし、PCから出てくる音が悪いと、周辺機器だけでは音を良くできません。
もう1つには、音楽がCDからMP3などの圧縮データに変わり、音質が下がりました。しかしPCなら大容量を活かして、24bit/96kHzのリニアPCMを扱うことができ、CDよりも高音質になれるという点を訴求したいと考えました。そこでPC自体もやろうということになりました。結局今では、ミニコンポの置き換えとしてPC事業に取り組むに至ってます。
Q オンキヨーがソーテックブランドを持ったことで、今後オンキヨーのオーディオ製品/周辺機器の接続性がソーテックPCとの組み合わせに特化されるのではという懸念があります。
神谷氏 これまで同様、オンキヨー製品の接続性をどこか1つのブランドのPCに限るつもりはありません。
Q 今後、ネットブックのラインナップは増やす方向でしょうか? また、サブノートなどへの進出はあるのでしょうか。
神谷氏 ネットブックのラインナップは、様子を見つつ、メリットがあると判断できたら増やしたいと思っています。サブノートについては、現行の15.4型やネットブックなどと食い合わないと判断できたら検討したいと思っています。
Q ありがとうございました。
SOTEC E7 |
今回は、ネットブックの開発者インタビューとしてオンキヨーも訪れたのだが、このインタビューで感じたのは、オンキヨーが非常に真剣にPCビジネスに取り組もうとしているということだ。同社では、オーディオビジネスを続ける上で、iPodやPCによるデジタルオーディオは無視できない存在であり、むしろそこを同社のビジネスの中心に据えようとしているかのようにも思えるほどだ。実際、神谷氏は「オーディオ市場はは縮小しているが、PCオーディオを含めると増えており、それに併せて会社も変わらないといけない」と語っている。
今回のDC101には、オーディオ周りでオンキヨー独自の技術は盛り込まれていないが、9月に発売されたiPodドック装備の液晶一体型PC「E7」には、オンキヨー製スピーカーが内蔵され、「ONKYO」ロゴも本体に刻印されている。
そのE7にも、オーディオ周りではまだ、オンキヨーの持てる力を発揮し尽くせてはおらず、2009年以降、オンキヨーとソーテック、両者のメリットを活かした製品を出していくという。その中には、PCと連動するAVアンプなどもあるようだ。ネットブックを含め、生まれ変わったソーテックPCに今後も注目していきたい。
□オンキヨーのホームページ
http://www.onkyo.co.jp/
□製品情報
http://www1.sotec.co.jp/direct/dc101/
□関連記事
【9月17日】SOTEC、iPodドック装備の液晶一体型PC
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0917/sotec2.htm
□ネットブック/UMPCリンク集(SOTEC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/umpc.htm#sotec
(2008年11月11日)
[Reported by wakasugi@impress.co.jp]